古堅真彦 氏
経歴:
コンピュータとデザインの関係について研究している.
最近は「画面上の動き」と「アルゴリズミックな思考」が主な研究テーマ.
美術系の学校で「アルゴリズミックなデザイン」や「プログラミングを使ったデザイン」をテーマに演習や講義,共同研究を行ったり,また,研究成果は世の中に直結させることが必要と考え,研究成果をアプリケーションソフトウェアに落とし込み,世の中に頒布したりしている.
1968年生まれ.奈良出身.著書には「Javaでモーションプログラミング」(広文社)
など.ソフトウェアは gam,mifi 等をリリース.
国際情報科学芸術アカデミー[IAMAS]助教授.武蔵野美術大学非常勤講師.
内容:
"コンピュータ","プログラミング".1960年代以降,これらの言葉にデザイナーは興味を持ち,かつ悩まされてきた.「デザイン」は常に「新技術」と対峙する領域である.写真や映像が世に創出されたときもそうであったし,ウェブページが一般のものになった時もそうであった.
コンピュータが進化するにつれ,デザインとコンピュータはさらに切っても切れない関係になりつつある.IllustratorとPhotoshopとQuark Expressが印刷出版形態を根底から変化させ,ウェブページが普及すると同時にコンピュータ自身がメディアになり,デザイン対象そのものが変貌しつつある.
デザインはコンピュータを貪欲に取り込み,コンピュータはデザイン業界を大きく飲み込んでしまった.
しかし,コンピュータとデザインが融合すればするほど,かい離していくものがある.今のコンピュータは便利である,が,複雑である.欲しい機能がほとんどそろっているが,ない機能は自分で作れない.
「Illustratorでこんな螺旋を描きたいな」と思ってもそれをつくるフィルタがなければ作れない.本来プロであれば,その道具にない機能は自ら作るのが当然である.太い線でデッサンしたければ鉛筆を太く削れなくてはならない.しかし,コンピュータは現状ではそれが無理である.好きな形のペン先でさえIllustrator備え付けの機能頼りである.これほど身も心も頼り切っている道具のペン先の形さえ自分で変えられない今の状況はめずらしい.
そして,デザイナー自身がこの状況に慣れつつある.つまり,とても充実した便利な機能がついているソフトを使ってものを作り,そこから逸脱するアイデアは封印する...怖い状況である.
コンピュータといえども所詮,道具である.道具はプログラマーだけが作るのではなく,もちろんデザイナーも作れる.それも,意外に簡単に作れる.しかし現況は,デザイナーが「作れる」という認識を得るチャンスが少なすぎる.私は,数年来,武蔵野美術大学やIAMASなどで「デザインを目指す人たち」にプログラミング教育を行ってきた.それは単に技術的側面だけではなく,「コンピュータを真に扱うのはプログラミング」であり「自らもプログラミングできる」という認識を得ることを促すためである.また,その授業からデザインとプログラミングの意外と緊密な関連性を肌で感じてもらうためでもある.そこで今回は,その考えを感じてもらうため,頭と身体を使ったワークショップを筆頭に,授業の内容,これまでの私や学生の作品の展示などを行い,参加者にデザインとプログラミングの関係性を感じ取り,考えるチャンスを共有できる内容にしたい.
古堅真彦 氏のウェブサイト:http://www.furukatics.com/>
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