これまでのデザイン教育における表現の問題は、メディアの特性や職能領域に関する理論と技術の修得に主眼が置かれてきました。それがコンピュータやネットワークの普及に伴ない、私たちのコミュニケーション環境が新たな様相を呈している現在、社会では新しいメディアリテラシー能力が必要とされ、クリエイターにはそうした背景での造形表現、とりわけコンピュータ上での新たなデザインの可能性が問われています。

そこで今回のシンポジウムでは、プログラミングによる作品制作や、美大などでその教育を実践されている古堅氏と野口氏をお迎えし、プログラミング言語による表現とはいったいどういったものなのか?またそれをデザイン教育として取り入れるにはどういった方法が考えれられるのか?というテーマについて触れたいと思います。

ヴィジュアルコミュニケーションデザインが次のフェーズへシフトするために、日頃デザインの教育に携わっておられる方々や、デザインを学ぶ学生の皆様方とその展望や可能性を探ってみたいと思います。


日時

2004年12月5日(日)
12:30 受付開場 13:00 シンポジウム開始

場所

武蔵野美術大学 鷹の台キャンパス 10号館 3階 305・6教室
会場地図/交通機関はこちら

参加費

一般 オーディエンス 1500円
会員 カメレオンプロジェクトメンバー 1000円

主催

カメレオンプロジェクト

問合わせ先 

カメレオンプロジェクト事務局 
※参加希望の方は、11月28日までに上記事務局宛に参加希望の旨をメールにてお送りください。
※懇親会参加希望についても合わせてご連絡ください。


<シンポジウムプログラム>

プレゼンテーション
13:00−14:00
『デザイン∩プログラミング → アルゴリズム』
古堅真彦 氏

経歴:
コンピュータとデザインの関係について研究している.
最近は「画面上の動き」と「アルゴリズミックな思考」が主な研究テーマ.
美術系の学校で「アルゴリズミックなデザイン」や「プログラミングを使ったデザイン」をテーマに演習や講義,共同研究を行ったり,また,研究成果は世の中に直結させることが必要と考え,研究成果をアプリケーションソフトウェアに落とし込み,世の中に頒布したりしている.
1968年生まれ.奈良出身.著書には「Javaでモーションプログラミング」(広文社)
など.ソフトウェアは gam,mifi 等をリリース.
国際情報科学芸術アカデミー[IAMAS]助教授.武蔵野美術大学非常勤講師.

内容:
"コンピュータ","プログラミング".1960年代以降,これらの言葉にデザイナーは興味を持ち,かつ悩まされてきた.「デザイン」は常に「新技術」と対峙する領域である.写真や映像が世に創出されたときもそうであったし,ウェブページが一般のものになった時もそうであった.
コンピュータが進化するにつれ,デザインとコンピュータはさらに切っても切れない関係になりつつある.IllustratorとPhotoshopとQuark Expressが印刷出版形態を根底から変化させ,ウェブページが普及すると同時にコンピュータ自身がメディアになり,デザイン対象そのものが変貌しつつある.
デザインはコンピュータを貪欲に取り込み,コンピュータはデザイン業界を大きく飲み込んでしまった.
しかし,コンピュータとデザインが融合すればするほど,かい離していくものがある.今のコンピュータは便利である,が,複雑である.欲しい機能がほとんどそろっているが,ない機能は自分で作れない. 「Illustratorでこんな螺旋を描きたいな」と思ってもそれをつくるフィルタがなければ作れない.本来プロであれば,その道具にない機能は自ら作るのが当然である.太い線でデッサンしたければ鉛筆を太く削れなくてはならない.しかし,コンピュータは現状ではそれが無理である.好きな形のペン先でさえIllustrator備え付けの機能頼りである.これほど身も心も頼り切っている道具のペン先の形さえ自分で変えられない今の状況はめずらしい.
そして,デザイナー自身がこの状況に慣れつつある.つまり,とても充実した便利な機能がついているソフトを使ってものを作り,そこから逸脱するアイデアは封印する...怖い状況である.
コンピュータといえども所詮,道具である.道具はプログラマーだけが作るのではなく,もちろんデザイナーも作れる.それも,意外に簡単に作れる.しかし現況は,デザイナーが「作れる」という認識を得るチャンスが少なすぎる.私は,数年来,武蔵野美術大学やIAMASなどで「デザインを目指す人たち」にプログラミング教育を行ってきた.それは単に技術的側面だけではなく,「コンピュータを真に扱うのはプログラミング」であり「自らもプログラミングできる」という認識を得ることを促すためである.また,その授業からデザインとプログラミングの意外と緊密な関連性を肌で感じてもらうためでもある.そこで今回は,その考えを感じてもらうため,頭と身体を使ったワークショップを筆頭に,授業の内容,これまでの私や学生の作品の展示などを行い,参加者にデザインとプログラミングの関係性を感じ取り,考えるチャンスを共有できる内容にしたい.

古堅真彦 氏のウェブサイト:http://www.furukatics.com/>


*休憩(10分)

14:10−15:10
『表現におけるプログラミング言語の役割』
野口 靖 氏(武蔵野美術大学非常勤講師)

経歴:
『人と環境、人間同士の相互関係性の知覚化』、『コミュニケーションの形態の知覚化』をテーマに作品を制作している。また、教育分野では、デザイン/アートにおけるメディア教育に関して興味がある。
1994
武蔵野美術大学視覚伝達デザイン学科卒業
1996
武蔵野美術大学大学院造形研究科視覚伝達デザインコース修了
1996-2000
武蔵野美術大学視覚伝達デザイン学科研究室助手
2003
ニューヨーク大学大学院Interactive Telecommunications Program修了
文化庁芸術家在外研修員
2004
ポーラ美術振興財団在外研修員
現在
武蔵野美術大学視覚伝達デザイン学科非常勤講師

内容:
デザインやメディアアートの教育分野において、プログラミング言語の学習が取り入れられるようになった背景はいくつか考えられる。
1980年代以降、Macromedia Director/Flash等のデザイナー/アーティスト向けの開発環境が普及してきたことにより、これまで彼らが関わる必要のなかった、動きのデザインや相互作用のデザインが、単純にプログラマーの仕事として分離することが難しくなってきたという点が一つ。そしてまた、上記の開発環境において一般化してきたスクリプト言語が、従来のコンパイル形式のプログラミング言語よりも平易で扱いやすく、初心者にも比較的学習しやすい性質を持っていたという点が、その要因として挙げられる。
そして、何らかの表現においてプログラミング言語が必要になるケースが増えた結果、メディアとしてのコンピュータの原理/システムへの理解が必要になってきたということが、今日ここまでデザイン/美術教育において、プログラミング言語教育の方法論の確立が重要視されている背景だと言える。
しかし、美術大学の学生に理工系のプログラミング教育をそのまま当てはめても、学生が興味を持つことは難しい。学生に対しては、プログラミング言語の敷居を低くすることと、実際に言語を学習することによってどういったことに利用できるのかを、具体的にイメージさせることが必要になってくる。
今回のワークショップでは、作者の製作過程や学生作品などのケーススタディを通して、プログラミング言語と表現との関わり、教育分野における位置付けや方向性などを俯瞰する。

野口 靖氏のウェブサイト:http://relationaldimension.com/


*休憩(15分)
ラウンドテーブル (ディスカッション)  15:25−16:30
「コンピュータとデザイン、表現、教育をめぐって」

司会進行 西中 賢氏
(カメレオンプロジェクトメンバー/武蔵野美術大学非常勤講師)


懇親会(参加費3000円) 17:30−