テスト   memex
鈴木 聡

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鈴木
僕が制作したのはこの机とこの上にあるオブジェなんですけど、タイトルはメメックスと言います。メメックスと言うのは1950年代にアメリカの数学者が考えた仮想上のコンピュータ装置の事です。いまで言うとインターネットとか、図書館にある検索装置とかそう言った物の類いで今では完全に存在している装置です。それはコンピュータですので電子世界の物なんですが、これは全部オブジェ、物として制作しました。物としてある事と電子世界の様に距離が離れていたり時間的な物が入れ代わったりするっていう世界を結び付けるために鏡と言う物を利用しました。箱に入っているんですけどオブジェが、箱に入っている物を棚から上にあげて自分で空けてみるって言う行為によってもコンピュータの中のフォルダを空けてみたりとかする行為とリンクさせてみました。基本的に、ここにある状態ではそれぞれの物に名前の様なものは付いていません。別にファイルの中には名前の入った、ちょっとした説明みたいのがのっているのですが、1番始めのというか、接する第1段階では名前と言うものはありません。例えば、アクリルボックスの物は「白い男の家」というタイトルをつけたのですが、それはヨハネスイッテンの版画、エッチングの作品のタイトルに同じ「白い男の家」っていうのがあって、それは立方体を組み合わせた家の版画だったんですけど、これを作りながらエッチングを見たので、エッチングを見たからこれを作ったというのではないんですけど、最終的にそのエッテングのタイトルを使いました。これは中に色々入っていて自分でパーツを組み合わせて家の中をレイアウトしていくって言うふうにして遊びます。素材がアクリルのスリガラスみたいの物とか半径の穴が空いたプレートとか、この紙で作った階段状の物とか後は鏡を使ったものとか入っています。自由にレイアウトしていくんですが、それぞれは他のオブジェとの関係性とは最初の段階では考えないと言うか、これはこれとして遊ぶ感じになって行くと思うんですけど、始めは隣に置いてあるんで、自分で空けてみたって状態で最初は1個だけだと思うんですよ、次にこれを遊んでいく内に次の箱も開けて見ようっていって、順番はどれでもいいんですけど、例えばこれにして、これを開けてみたらこういうプレートが何枚か入っていて、レール状のところに差し込めるようになっているんですけど、差し込んでいって、鏡に写っている事で、こっちのプレートがこっちに写る事で、こっち向きの遠近感が出たり、これは手前にこういう空間になったりしていって、自分で組み合わせていく事で連続した空間を作ったりする事ができます。例えば、この白い男の家って言う男が街に出かけるために電車に乗って移動していくみたいな、物語を自分で考えたりしてみてもいいと思います。これは例えば、現に住んでいる男の世界を体験するために作ったもので、こちらの穴からこういう風にして覗くんですが、こちらの穴からこちらの鏡を見ると、前の風景と後ろの風景が重なって見えて、合わせ鏡なので連続してズーッと奥に連続した画像が見えます。これを持ちながら歩くって言うのが、とても難しいと思うのですが、酔っぱらう感じみたいな、揺れちゃう感じっていうのが体験出来ると思います。この大きいやつはルネッサンスの時のデッサンに使うアングルをモチーフに作りましたが、こちらの形はミース・ファン・デル・ローエのガラスのカーテンていう建築を模した形をしています。鏡が入れたり抜けたりするんですが、全部中身を抜くと透明で、普通にデッサンのアングルとして使用する様な状態になりますが、鏡を入れるとこちら側に自分が写ったり、例えばモチーフから見た場合には向こう側の人がここから透けて見えたり、モチーフ自身がこちらの鏡に写ったりと言う仕組みで、入れ代わる空間と言うものを考えました。ガラスノカーテン、こっちの建築との関係と言うのはこれは全体のシルエットなんですが、近くによった時にそのガラスばりの建築なのでガラス窓がたくさん空いているという事で、この空間を近寄った時の空間として設定して遠い所と近い視点という事で考えました。全体としてオブジェがバラバラな状態から自分で引っ張り出して来て色々見たりしながら考えいくって事になるんですが、そこで、自分の中で物語として組み立てる行為とか、鏡の世界の中というものと現実的な世界の関係を考えてみたりとか、ガラスとか鏡の世界というのは、普通に街を歩いていれば、ショーウィンドウに自分の姿が写ってたりする事に突然気が付いたりする経験とかあると思うんですが、後ろから誰から見られている様な感覚になって振り返っているとショーウィンドウに自分の姿が写っていて、それから視線を感じるとかいろんな経験とか普通にあると思うんですね。そういう経験みたいなものをギュッ凝縮というか、鏡っていう分りやすいものを持って来て普通の現実的な生活の中で作品が上手くリンクしていけばなと思いました。
 
陣内
実は卒業制作の時にですね、鈴木君が制作展にいなかったので今の様な詳しい話をきちっと聞けなかったのが残念だったんですけど、僕は物語にこだわっているなぁていう事を感じるのが1つと、もう1つはですね僕なんかは映像の方をやっているからなんですけど、映像にはいろいろなギミックっていうのがありますよね、スターウォーズという作品が1番最初に出来た時には、多重焼き込みでロケットの中にいる人間が喋っている事と宇宙船が飛んでいる事と後ろから宇宙船が近付いてくる事を多重焼き込みで作っていますよね。多重焼き込みで作っているのは例えば、フランキー境が出た映画でちょっと映画の名前は忘れちゃいましたけど、この前の新聞にのってたんですけど、最後のシーンで、江戸時代のシーンなんですけど、江戸の街道をフランキー境が走っている、その時に街道筋に見えるようにわざわざ、本当に走っているのは多摩川の川っぷちなんだけど、向こう側に見える山であるとか風景であるとかをコラージュしている、画面の中でコラージュしている。ていう様な話があるのだけど、映像中でいろんなトリックを映像に定着する事によって作られているんだけど、それが例えば、いろんな人が文章の中で書いている事はいったいどういう事だったろうって確かめるためには何かしら身近な道具が必要じゃないですか。そういう意味で言うと、これは実は物凄くそれに対してね、一つの隠喩とか比喩とかの見え方、特に鏡を使った見え方に関してのいろんな解答がここにあるということが、ようやくしっかり今、理解が出来た。ということで何故もっと早く教えてくれなかったのていうところです。鈴木君は今度大学院でも勉強をしてくれるので、次はプレゼンテーションですね。自分のやっている事をどう説明するかという事をがんばってもらいたいと思います。