テスト   和歌のことば「たとえよせ」「きせつよせ」
寺田 久仁子

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寺田
私は読み手が、本を読む人が和歌に親しめる様な本を作りたいなということを目標に約1年間、卒業制作を続けてきました。和歌って言うのは単なる昔の、平安時代の貴族の優雅な遊びというだけでなくて、ひらがなを使いはじめた人々が開拓して磨いてきたものの見方の提案、例えば桜の見方だったり、梅の見方だったり、物の見方の痕跡だなって言うのがあって、たった31文字の中にいろんなものの美しい一瞬が留められています。私は和歌を難解な古典としてだけではなく、もっと身近な視点、自分で捉えられるようになってからもっと他の人が和歌に近付ける様な本が作れないかなと考えるようになりました。そこで、私達と和歌の世界と共通する要素を編集軸としてはどうかと考え、両方に共通の比喩と季節、四季を取り上げる事にしました。それからもう少し和歌を勉強してから、本のページをめくると言う事と和歌の言葉っていうのはレイヤーとか層の構造になっているので、ページのめくる事と、その層の構造を重ねて表現が出来ないかことを、2冊の本として試みました。こちらは季節をテーマにした本なんですけど、最初からの構造は、最初から春夏秋冬になっていまして1月から12月まで各月の歌を大体1首から2首多い時には4首くらいあるんですけど、1月から12月まで歌を読めるようになっています。これは春のトビラで、色については後で説明します。最初に1月が出てきます。1月の歌、それから歌の意味が少し読み易い、やらかい文章に自分で直したものが1ページづつ捲っていくごとにお話が進む様な感じで見えてきて、色もだんだん濃くなってきます。この色はというのは1月の歌は若菜と言うのが出てくるのですけど、花と言葉と色というのは繋がっているので、若菜色と言うのを作って載せています。これは少しイメージ的な図版が出てきてから、最後に若菜という言葉の意味が見えるようにしています。これで1月が終わって2月になると次は梅になるので、梅が出てくる歌と意味と色とそれから、最後はイメージと、梅と言う言葉の持つ意味が出てきます。色と言うのはモチーフの色をこのように1首づつ1色当てはめて出てくるモチーフの色と言うのもが必ず調べればあるので、その色をパソコン上で作って12ヵ月、グラデーションをまず作ってから歌を呼んでいく内にだんだん色が濃くなるようにこっちの本では調節しています。最初に作った色というのは、こんな風に1色づつのカラーチャートみたいのを作って、濃淡を調節してグラデーションを作りました。こちらは和歌のたとえ、比喩の代表的なものを5種類あつかっている本です。こちらは、比喩の構造と言うのを読みやすいようにしたもので、例えば掛詞だったら、まず歌の全体像が見えてきて、次に少し細かい、それぞれの言葉の意味が見えてきて、少しすると上の部分が消えて、大事な掛詞が隠れている部分だけが残るようになって、掛詞の一層目が見えてきて、次の層が見えてくるようになっていて、何と何が掛けられているのが分かるようになっています。結構分りやすいんですが、ここに嵐という言葉が出てくるのですが、歌の中に出てくる山風と言う言葉は、じつは嵐って言う漢字を隠していたり、嵐と言う言葉自体にも実は荒らすと言う意味があるっていう、いろいろなものが隠れているって言うのをめくるという構造に重ねて作ってみました。 全体を通して和歌の情報が載っている本とか歴史の人物が載っている本というだけではなくて、物としてめくったりするのが楽しかったり、所有する喜びがある様な存在感っていうものも追求しながら作りました。
 
勝井
色の決め方っていうのは、それぞれ花とか物質性によっているわけね。それによって色が決められてきた。ていう事なんだね。そうすると春とか夏とかっていうのは歌う内容によってそれが色を決定する条件になっちゃうんだね。やっぱり傾向がでるのか。歌の選び方とかでね。
 
寺田
歌は全て百人一首から取りました。
 
勝井
全部あるの
 
寺田
百人一首の中で季節をテーマにしたものが32首あるですよ、それを1月から12月にもう1回構成し直して使いました。
 
勝井
色をエディトリアルのページの重ねの中で表現しているっていうのが微妙だけど面白い表現ですよね。構造を出しているのが面白いね。
 
新島
あれ結構良く見ると分りやすくて教えてくれるんですよ。
 
勝井
だから実際あっているよね、表現の仕方っていうのがね。
 
新島
あと立て組をここまできれいに組めてるっていうのが。
 
木本
ひらがなが生まれて和歌が生まれたっていう、そこのプロセスから入っているのが、すごいわけじゃないですか。要するにあらかじめあるものを分析したんじゃなくて、生まれた過程を知ってやっているっていうそこがすごいいいですよね。そこの喜びがほんと一番出ている。分析とかもすごい面白いですし。見つけたという感じがすごいする。